単純ヘルペスウイルス1型が原因の口唇ヘルペスは、再発を繰り返しやすい嫌な特徴を持っています。
本来なら、水疱などの症状が出る度に病院に足を運ぶのがベストな対応なのですが、処方される内服用の抗ウイルス薬は効果は高いものの非常に高額で、保険適用後でも1錠あたり500円以上します。
さらに、口唇ヘルペスの場合は処方量の上限が5日分と決めれている為、次の発症に備えてストックしておく事も難しいのです。
頻繁に症状が出てしまう方にとっては時間的にも経済的にも結構な負担になりますし、早期治療で症状や治療期間が大幅に軽減できる口唇ヘルペスの場合、病院に足を運ぶ半日程度の時間でさえ治療の妨げになってしまいます。
さて、そんな時に役立つのが薬局で買える口唇ヘルペス用の市販薬です。
塗り薬なので内服薬と比べると効果は若干落ちますが、口唇ヘルペスが発症しそうな前触れがあった時に即座に使えるのは大変心強いです。
今回は薬局で売っているヘルペス市販薬の中から
●アラセナS軟膏
●アラセナSクリーム
●アクチビア軟膏
●ヘルペシアクリーム
●ヘルペエース
以上の5種類について、違いや選び方を解説しつつ、第一類医薬品に属するこれらヘルペス市販薬の買い方ついて説明してみたいと思います。
ヘルペス市販薬について知っておくべきこと
ヘルペス市販薬を購入したり使用する大前提として、これら市販薬は口唇ヘルペス再発時に使う薬である事を理解しておきましょう。
噛み砕いて言えば、後述するバルトレックスを除いて性器ヘルペスや帯状疱疹などの他の症状には使えず、使用出来る場所は口周辺に限定されています。
口唇ヘルペスの市販薬に代表される再発治療薬の多くが第一類医薬品に分類されていて、過去に医師の診断や治療を受け、再度同じ症状が出た場合のみ使用可能です。
以前も記事にした事がありますが、口唇ヘルペスは他の病気と誤認しやすく、間違った使用を避ける為にも購入時には薬剤師が同じ症状である事を確認する仕組みになっています。
薬剤師の指導を受ける必要があるとはいっても、後述するポイントさえ理解していれば、基本的に誰でも買えてしまいます。
ですが、初感染時にセルフチェックで判断している場合は使用を控えた方が良く、素直に医師の診断を仰ぎましょう。
第一類医薬品とは?
第一類医薬品は医療用として長年利用され、正しい情報に基づいて利用すれば市販しても安全かつ効果的にだと認めれた医薬品です。
また、使い方以外にも副作用や相互作用の点で薬剤師のサポートが必要とされ、第一類医薬品の取扱店であっても、薬剤師が不在の場合は販売は出来ない仕組みになっています。
同じ第一類医薬品としては、解熱鎮痛薬のロキソニンやシミに効果があることで話題のトランシーノなどが有名ですね。
薬局で買える『ヘルペス市販薬』5種
ここからは薬局で取扱いのあるヘルペス市販薬から、代表的な製品を5種類紹介していきます。
使われている抗ウイルス成分の違いと用途によって大きく2つに分類されますが、目的にあった使いやすい製品を選びましょう。
アクチビア軟膏(グラクソ・スミスクライン社)
参照元:グラクソ・スミスクライン社
【容量】2g
【形状】チューブ入り軟膏タイプ
【価格】実売700~1200円
【用法】1日3~5回適量を患部に塗布
【使用期限】開封後6ヵ月以内
口唇ヘルペスの市販薬として最も有名なのが、このアクチビア軟膏です。
抗ウイルス成分であるアシクロビルを50mg配合し、ヘルペスウイルスの増殖を抑えます。
アクチビアには添加物としてマクロゴールが配合されていますが、マクロゴールには患部の保護と保湿の効果があり、患部のひび割れなどを防いでくれます。
アクチビアは軟膏タイプなので患部に塗りこむと言うよりも覆い被せる様にして使います。
私も使った事がありますが、当時は軟膏とクリームの違いがイマイチわからず、同じようなものだと思って使っていましたが、使用感はだいぶ異なります。
軟膏はペースト状ですが、のびが悪くクリームの様には使えません、ハミガキ剤を肌に塗る感覚と言う例えが一番近いでしょうか?患部を覆う様に塗布した後も薬が白く残り、体温でジワジワと溶けていきます。
外出の頻度が低く、ある程度の時間を治療に割ける方に向いていますが、口唇ヘルペスの傷隠しにマスクを活用している方とは、相性の良くない薬かも知れません。
ヘルペエース(奥田製薬株式会社)
参照元:奥田製薬株式会社
【容量】2g
【形状】チューブ入り軟膏タイプ
【価格】実売1000円前後
【用法】1日3~5回適量を患部に塗布
【使用期限】開封後6ヵ月以内
こちらも抗ウイスル成分としてアシクロビルを50mg配合し、添加物としてマクロゴールを含有しています。
薬の組成が前述のアクチビア軟膏と全く同じで、ぶっちゃけると類似商品に相当します。
ヘルペエースは取扱店が極端に少なく価格面にもメリットが無いので、素直にアクチビア軟膏を選んだほうが良いでしょう。
因みに私は一度も見掛けた事がありません。
ヘルペシアクリーム(大正製薬)
参照元:大正製薬
【容量】2g
【形状】チューブ入りクリームタイプ
【価格】実売800~1200円
【用法】1日3~5回適量を患部に塗布
【使用期限】開封後6ヵ月以内
ヘルペシアクリームも抗ウイルス成分としてアシクロビルを50mg配合しています。
ですが、アクチビア軟膏やヘルペエースと違い、のびが良く目立たないクリームタイプなので外出頻度が多い方やマスク愛用者との相性が抜群です。
ただし、アシクロビルとマクロゴールというシンプルな組成のアクチビア軟膏やヘルペエースと比べて、ヘルペシアクリームには複数の基質の他にl-メントール、ステアリン酸ソルビタン、ポリソルベート60、パラベン、クエン酸、クエン酸Naなどの保存料が入っています。
過去に保存料でアレルギー反応を起こした経験のある方は使用を見送った方が良いでしょう。
アレルギーの部分に差し障りが無いのなら、ヘルペシアクリームは抗ウイスル成分としてアシクロビルを配合した薬で最も使い勝手が良いと思います。
アラセナS・アラセナSクリーム(佐藤製薬)
参照元:佐藤製薬
■アラセナS
【容量】2g
【形状】チューブ入り軟膏タイプ
【価格】実売1000~1500円
【用法】1日1~4回適量を患部に塗布
【使用期限】開封後6ヵ月以内
■アラセナSクリーム
【容量】2g
【形状】チューブ入りクリームタイプ
【価格】実売1100~1500円
【用法】1日1~4回適量を患部に塗布
【使用期限】開封後6ヵ月以内
最後に紹介するのがアラセナSとアラセナSクリームで、アラセナSは軟膏タイプ、アラセナSクリームはクリームタイプとTPOに応じて使い分けが出来るようになっています。
前述のアクチビア軟膏・ヘルペエース・ヘルペシアクリームと異なり、アラセナSには抗ウイルス成分としてビダラビンが30mg配合されていて、同社医療用の「アラセナ-A軟膏3%」「アラセナ-Aクリーム3%」と同じ濃度の有効成分が配合されています。
ビダラビンはアシクロビルよりも少量で効果を発揮し、1日3~5回のアシクロビルと比べて1日1~4回と格段に少ない回数で済みます。
ヘルペス市販薬は値段の割に2gと容量が少ないので、これは地味に嬉しい部分ですね。
目立った欠点も無く、ヘルペス市販薬としてかなり優秀なアラセナSですが、他と比べて若干価格が高いです。
同じアラセナSでも使い勝手の良いクリームタイプが最も割高で、下手をするとアクチビア軟膏が2個買えてしまう値段です。
私はアラセナSクリームを愛用していますが、個人差を度外視しても確かにアクチビア軟膏よりも治りが早いですし、患部に塗ったままでも気兼ねなく外出できるので重宝しています。
不満点は価格とアルミ製の硬いチューブくらいでしょうか。
アブレバ/Abreva Cold Sore(グラクソ・スミスクライン社)
アクチビア軟膏と同じグラクソ・スミスクライン社製で、アメリカの厚生省にあたるFDA(米国食品医薬品局)に唯一承認された非処方箋調剤薬です。
ドコサノール配合のクリームタイプで平均2.5日のスピード完治が売りですが、効果はアラセナSと同程度の印象でしょうか。
国内では正規販売されていないため並行輸入品を頼る事になり、取扱いは極少数な上に価格も割高です。
正規販売されていないが故に、後述する薬剤師とのやり取りは不要ですが、アクチビア軟膏やヘルペシアクリームのアシクロビル、アラセナSのビダラビンで効果の無かった方が最後に試す、第3のヘルペス外用薬といった位置付けでしょうか。
薬局でのヘルペス市販薬の買い方
代表的なヘルペス市販薬5種類は全て第一類医薬品に属しています。
これらを薬局で購入するには薬剤師とのやり取りが必要で、お店や人によっては結構しつこく質問や確認が行われる場合もあります。
普通の薬と違い、初めて買う場合はある程度の心構えが必要で
『どんな質問をされるんだろう…』
『答えられなかったらどうしよう…』
『間違ったら買えないかも…』
などと不安になってしまいますよね?
実はそんな状況を回避するために、各製薬会社では購入の可否を判定できるセルフチェックシートを準備していて、その用紙を薬剤師に見せる事で購入が格段にスムーズになります。
セルフチェックシートの大半は各製薬会社のHP上でPDFファイルとして配布されていて、プリンターをお持ちの方ならば、誰でもプリントアウトして使用できます。
また、プリンターやパソコンをお持ちでなくてもPDFファイルさえ保存できれば、セブンイレブンのネットプリントを利用してセルフチェックシートをプリントアウトすることが出来ます。
上記がヘルペス市販薬用のチェックシートで、リンク先のPDFファイルをプリントアウトして使用します。
注意点としてアラセナS・アラセナSクリームのリンク先だけは直接PDFファイルがダウンロード出来ない様になっています。
リンク先ページの「一般向け購入前チェックシート」クリックして、いくつかの質問に回答し、結果を表示すると画面に「印刷する」のボタンが現れ、プリントアウト出来るようになります。
自宅にプリンターをお持ちでない場合は「印刷する」ボタンをクリックした後に開く、プリント設定の別窓で「送信先」の部分を変更して「PDFに保存」を選択しましょう。
因みに、各チェックシートの内容に大きな違いは無く、薬剤師さんに一言お願いするだけで、5種類全てのヘルペス市販薬の購入に使用できると思います。
薬剤師とのやり取りが面倒だと感じてしまう方には
薬局でのやり取りが面倒に感じる方や症状が落ち着いていて、常備薬として購入したい方にはネット通販を利用する方法があります。
薬剤師を介さないと購入できないルールがあるのに不思議に感じるかもしれませんが、サイト上にある幾つかの質問に回答し、半自動化されたメールでのやり取りで購入できる仕組みになっています。
有名処では楽天とYAHOO!ショッピングが対応しており、それに追随するように2017年からはAmazonでも取り扱いが開始されました。
どのECサイトを利用する場合であっても、質問に対する回答でよほど変な選択をしない限り、ほぼ確実に購入出来ます。
該当する市販薬のページには10項目程度の質問があり、回答を選択していく形式になっていますが、殆どの回答がデフォルト(初期表示)のままでも問題の無い状態になっているので、成人の方ならば「性別」と「この医薬品の使用経験」の部分くらいしか変える必要がありません。
因みに、私は2回ほどネット通販で購入したことがありますが、「この医薬品の使用経験」についての質問は、回答が「あり」「なし」どちらでも購入できました。
顔の見えないやり取りなので、過去に医師の診断経験が無くても購入出来てしまいますが、モラルを持って利用しましょう。
まとめ
5種類のヘルペス市販薬を紹介しましたが、アラセナSクリーム・アクチビア軟膏・ヘルペシアクリームこれら3つから選ぶのがベストでしょうか。
薬の効き目には個人差があり、アラセナSは効くのにアクチビア軟膏が効かない場合がありますし、その逆の場合もあります。
ヘルペス市販薬を初めて買う場合は抗ウイルス成分の異なる2種類の薬をセットで買うのがおすすめで、メインにアラセナSクリーム、サブにアクチビア軟膏かアレルギーが無ければヘルペシアクリームの組み合わせが最適だと思います。
注意点として、ヘルペス市販薬は開封後6ヵ月で使い切らないと薬効が落ちてしまいます。
再発サイクルが短い方なら使い切れると思いますが、半年に一度しか再発しない方は使用期限に注意しつつ、未開封品を一つ程度はストックする様に心掛けましょう。
最後になりますが
『塗っても効かない』
『目立つから使いたくない!!』
『範囲が広く薬の量が少な過ぎる』
『性器ヘルペスの場合はどうすれば?』
『出来るだけ早く治したい!!』
『何時でも使えるように長期保存できる薬は?』
『予防できる薬はないの?』
上記の様な問題や要望をへルペス市販薬で感じている方にはヘルペス内服薬が役立ってくれます。
特に現在主流の第2世代抗ウイルス薬『バルトレックス』の効果は高く、口唇ヘルペスだけでなく性器ヘルペス(GE)にも効果を発揮し、再発の前触れや予兆を感じた際に服用する予防投与にも使える、大変優秀なヘルペス内服薬です。
バルトレックスに代表されるヘルペス内服薬は処方薬なので、残念ながら普通の薬局では手に入りません。
専門の通販業者を通じて海外からの並行輸入品を自己責任の範囲で利用することになりますが、特に面倒な手続きは存在せず、誰でも簡単に購入できるとあって、思っていた以上に多くの利用者がいます。
ヘルペス持ちにとって、まさに頼みの綱と呼べる薬ですが、今回紹介した5種類のヘルペス市販薬と併用すれば口唇ヘルペスをより早く確実に治すことも出来ます。
残念なことに、口唇ヘルペスは初感染から1年以内に2割が再発し、性器ヘルペスは初感染から1年以内に8割が再発すると言われています。
これら単純ヘルペスの再発に不安を感じている方はヘルぺス市販薬やバルトレックスを常備して再発に備えつつも、予防効果のあるリジン配合のサプリメントを日常的に摂取する事を心掛けましょう。